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テインの単筒式ストラットはなぜ「倒立式」なの?

よく雑誌などで出てくる
「倒立式ショックアブソーバ」という言葉。
「倒立式って一体何?」
「なぜ倒立式にしなければならないの?」

といった疑問にお答えします。

倒立式って??

そもそも「正立式とか倒立式って一体何のこと?」という方が多いと思います。

簡単に言うと、ショックアブソーバが上向きで設置されるのが「正立式」、下向きで設置されるのが「倒立式」なんです。

では、「どういった場合に、どうして倒立式が必要になるのか?」という疑問に対して、順を追ってご説明していきましょう。

ストラットタイプは強度が必要

ストラット構造の略図

現在、多くの車のフロントに採用されている最も一般的なサスペンション形式が、マクファーソンストラット式と呼ばれるタイプ。
このタイプはその構造上ショックアブソーバ自体がサスペンションアームの一部を担っているため、十分な強度が必要不可欠です。 もし十分な強度が確保されていない場合、操縦安定性に悪影響を及ぼすばかりか、最終的に破損し重大事故に繋がる恐れがあるのです。

強度を確保するには?

純正でも多く採用されている複筒式の場合、ストラットタイプではピストンロッドの径を太くすることで強度を確保しています。 構造上、封入ガス圧を低くできる複筒式ではピストンロッドの径を太くした場合でも、 内部部品の工夫次第で乗り味への影響を最小限に抑えることができます。

しかし、単筒式となると話は全く変わってきます。なぜなら、単筒式は安易にピストンロッドを太くすることができない構造上の制約があるからです。 その理由とは、一体何なんでしょうか??

一般的な単筒式の構造

一般的な単筒式構造の場合、伸び側と縮み側の減衰力をピストンバルブのみで発生させていますので、 一定以上のガス圧をかけないと縮み側の減衰力を正確に発生することができません。

では、ガス圧は高い方がいいのでしょうか?

いえいえ、そう単純ではありません。 ガス圧が高すぎると反発力が上がるのに加え、フリクションも増大し乗り心地の悪化に繋がってしまいます。

このように、単筒式のガス圧というのは非常に絶妙なバランスの上で成り立っているんです。

単筒式を正立式のままピストンロッドを太くすると…

では単筒式のストラットタイプで、正立式のまま単純にピストンロッドを太くして強度を確保しようとした場合はどうなのでしょうか?

ピストンロッドが細い場合と比較してみると、ストロークした際にオイル室に入り込んでくるピストンロッドの体積が大きくなった分、 ガス室の圧縮が大きくなり、反発力が増します。

また、ピストンロッドが太くなった分オイル容量が減り、 単筒式が本来持つ「オイル容量が多い」というメリットが薄れます。

さらに、同じストローク量でもピストンバルブを通過するオイル量が少ないため、減衰力の安定性が下がります。 それを少しでも改善するためにはガス圧をさらに上げる必要があり、乗り心地の悪化に繋がってしまいます。

すると、 「性能の悪化を最小限に食い止めるために、ピストンロッドは出来るだけ太くしたくない」
「でも強度を確保するにはある程度の太さが必要…」
といったジレンマに陥ることになり、強度と性能を天秤にかけながら妥協した設計をせざるを得なくなってしまうのです。

つまり、単筒式にとって正立式のままピストンロッドを太くすることはデメリットを助長するだけで、 もはや単筒式を採用するメリットはほとんど無いといっても過言ではないでしょう。 (単筒正立式でもレース用等、ショックアブソーバー配置スペースに余裕があってピストンバルブ径を太く設計できたり、ストロークが短く別タンクが装着されているようなモデルであれば、上記デメリットを排除することが可能です。)

ちなみに、巷で溢れている海外製の激安車高調のうち、単筒式を謳うモデルの大半はストラットタイプにこの正立式構造を採用しています。

これはあくまでも参考ですが、今回調査した単筒正立式サンプルは86/BRZのフロント用でピストンロッドはφ20。 対して純正ショックアブソーバのピストンロッドはφ22。 純正よりも細いピストンロッドを使用しているんです。

もちろん、純正より強度の高い材質を使用すれば問題ない場合もありますが、仮に材質が同じであったならば純正より強度が劣るのは明らかです。

この事実からも、単筒式ストラットの正立式がピストンロッドを太くできない事情が垣間見えますね。

強度と性能を両立するには?

では、単筒式のストラットタイプにおいて、強度と性能を両立するためにはどうしたら良いのでしょうか?

答えは、「倒立式」のように、ピストンロッドとは別の太いパイプで強度を受け持たせること。

図のように、ショックアブソーバのケースのような太いパイプをシリンダーにして摺動させ曲げ方向の強度を受け持つことで、 細いピストンロッドのまま、単筒式本来の性能や「オイル容量の多さ」といったメリットを犠牲にすることなく、 十分な強度も確保できるというわけです。

ではなぜ、海外製激安車高調の単筒式ストラットタイプの多くがこの倒立式ではなく、 妥協した設計をせざるを得ない正立式を敢えて選択するのでしょうか?

その主な理由は、 「部品点数が少なくコスト的に有利だから。」

構造上部品点数が多く組み立ても複雑で、より高い精度が求められる倒立式よりも、正立式の方が安く作れるというワケなんですね。

テイン製品はまず性能ありき

以前は「単筒式のストラットタイプ=倒立式」というのが常識でしたが、 正立式を採用した激安車高調の台頭によって今ではその常識が崩れつつあるのも事実。

でも、せっかく単筒式の車高調を買うのですから、もしあなたの愛車がストラット構造のサスペンションを採用している車種であれば、 十分な強度と単筒式本来の性能を両立できる「倒立式」を採用している製品を選ぶことを強くお薦めします。

もちろんテインはショックアブソーバとしての性能を第一に考え、すべての単筒式ストラットタイプに「倒立式」を採用しております。

横浜の自社工場にて熟練スタッフが1本1本丁寧に組み立てを行い、各パーツにも高品質・高精度のものを採用しておりますので、 単筒式本来の性能を存分にご堪能頂けると確信しております。

確かに海外製の激安車高調と比べるとお値段が高く感じられてしまうかもしれませんが、 お客様に安心してご使用頂ける高い安全性を確保しつつ、さらに高性能な製品をより低価格でご提供できるよう、 私たちは今後も研究開発を進めて参ります!

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